たしかに色々変わった

iPodは何を変えたのか?

iPodは何を変えたのか?

  • 作者: スティーブン・レヴィ,上浦倫人
  • 出版社/メーカー: ソフトバンク クリエイティブ
  • 発売日: 2007/03/29
  • メディア: 単行本
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読了.380ページと薄くはない本だけれども,飽きずにあっという間に読めた感じ.タイトルからいってよくある「これこれこうで,iPodはこうやって売れたー」みたいな理由後づけのビジネス書かとも思っていたけれども,そんな感じでは全くなかった.たしかにiPodが受け入れられた理由を著者なりに分析してはいるけれどもそれだけではなく,初代のiPodが出てから2006年末くらいまで*1Appleという会社の流れもカバーしている.著者はニューズウィークの編集者ということで,ジョブズとの直接のやりとりも多いらしく,その辺も興味深い.それからジョブズほど表舞台に大々的に出てくることの少ないジョナサイン・アイブへのインタビューの様子などもあり,読ませる内容だった.他にはビル・ゲイツハワード・ストリンガーとのやりとりもあったりする.
とはいえ,この本の一番の魅力は著者自身がiPodのヘビーユーザーであり,自信の関連エピソードをありきたりではなく綴っている部分だと思う.特に6章のiPod内のプレイリストはその所有者を反映しているよーみたいな話だとか,8章のシャッフルの悩ましい選曲の話だとかが面白くもあり,共感もする部分だった.そんな印象について訳者あとがきから言葉を借りると

レヴィはヒップなニューヨーカーを自負し,音楽的趣味の凡庸さを指摘されたら本気で落ち込み,シャッフル再生の偏りに悶々としたりもする,どこか憎めないオッサンでもある(そうした日常的なきっかけから思索を進め,読み応えのあるエッセイを仕立ててみせるあたりは,さすがに一流紙のライターだが)

というのがこの本の魅力を端的に示していると思う.ただ,その語りのリズムや雰囲気を訳しているという点で訳者の力量も少なくない貢献をしているとも思った.日本人の感覚ではわかりづらい部分には適宜注が入り,テンポ良く読み進められる感じがした.
読み終わってから知ったんだけれども,iPodのシャッフル再生のように本の内容を章ごとにシャッフルして読み進められるってのも,iPod書らしい(でも著者としては大変そうな)ユーモア感.ちなみに個人的なお気に入りは6章(アイデンティティ)と8章(シャッフル),それから3章(オリジン)あたり.

*1:この本は2007年4月初版